先日久しぶりに高橋迪雄(みちお)先生にお会いした。先生は現在、味の素健康基盤研究所の顧問である。以前は東京大学農学部の教授であった。先生がまだ助手のころに私の卒論の指導教官になっていただいて以来もう40年近いおつき合いである。
私は卒業して味の素の研究所に入社したが、社会人になってもよく先生の研究室を訪れたものである。いつも土曜日の午後に訪問すると、どんなに忙しくても必ず笑顔で迎えてくれた。そしていつも2~3時間があっという間に過ぎたものである。というのは、先生の話はとにかく私にはおもしろくまた興味深いものだからである。難しい研究の中味の話をいつも実社会や日常の生活の事象につなげたり、おきかえたりしての話題はたまらなくおもしろいのである。
だから私が衆議院議員の現職時代に民主党の議員勉強会に講師としてきていただいたことがある。本来のテーマは教育問題を中心とした勉強会であったが教育を考える上で人間とはそもそも何かを理解しておくことが大切ではないかということになり、私が「それではいい先生がいる」といって高橋先生を講師としたのである。その時のテーマはずばり「ヒトとは」であった。私の期待以上にこの講演は盛り上がり極めて好評であった。いま大活躍している原口一博議員は「もう一度じっくり聞きたい」と言い、その後の委員会の質問の中で先生の話を引用していた位である。
先生は2年前にその時の話も含めて「ヒトはおかしな肉食動物」というタイトルの本を出された。とにかくおもしろい本である。例えば「ジャガイモ」が人間の必要としている必須アミノ酸がみごとにバランスした食べ物である。そのジャガイモは16世紀にインカ文明を滅ぼしたスペインによってヨーロッパにもたらされ、そのことがヨーロッパのそして世界の社会を大きく変える原因となる(なぜかは本を読んでのお楽しみ)などという話は文句なくおもしろい。先生に会うといつもこうした類の話でついつい時間が経つのも忘れてしまったものである。そんな訳で私は高橋先生とお会いするのが今も楽しみのひとつである。
「ヒトはおかしな肉食動物」
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