9月に入ったら一気に秋の気配となった。
明日(9月8日)は旧暦8月15日中秋の名月。ただ関東はどうも天気がよくないようだ。
先週の9月3日、地元川崎区殿町の川崎生命科学・環境研究センターで「ものづくりによるナノ医療イノベーション拠点シンポジウム」が開催された。このシンポジウムには福田市長をはじめ行政はもとより川崎商工会議所山田会頭以下多くの地元中小企業経営者に加え関係する企業及び大学の研究者も多数出席をし大盛況であった。主催は川崎市産業振興財団・COINSである。多摩川を挟んで羽田空港に隣接するこの殿町地区は国際戦略総合特区、ライフイノベーション・グリーンイノベーションの中心的地区である。一般にキングスカイフロントと呼ばれている。(キングスカイフロントとは「Kawasaki INovation Gateway at SKYFRONT」)
この地区が特区認定を受けたのは平成23年12月である。当時は民主党政権時であり、私は政調会長代理として全国の特区認定に党の責任者として政府との検討・協議に当った。結局この時は全国で7つの地区を国際戦略特区として認定をした。その当時から政府サイドでこの特区の担当をしていたのが和泉洋人現内閣総理大臣補佐官、健康・医療戦略室長である。従って私は和泉さんと何度も意見交換し協議を重ねたものである。その和泉さんが今回のシンポジウムの冒頭で「成長戦略からのキングスカイフロントへの期待」と題して基調講演をされた。如何に期待が大きいかが明快な内容の話しであった。
引き続き講演とパネルディスカッションであった。私が特に興味深く聞いたのは片岡一則(東大教授)及び木村廣道(東大特任教授)の講演であった。そのお二人の話しで最も注目したのは初めて聞く「体内病院」という発想と言葉である。その目標は「不可能を可能に」を目指して日本中・世界中から多様な人材・資金・最先端の技術を集積し、いつでも・どこでも・誰でも・心理的・身体的・経済的負担なく社会的負担の大きい疾患から解放され自律的に健康になっていく社会(スマートライフケア社会)を実現することだという。夢のような話である。
そこで「体内の血管などの微小環境を自律巡回するウィルスサイズのスマートナノマシン」を診断と治療に必要な要素技術をあらかじめ作り込んだものを創製し、人体内の「必要な場所で・必要な時に・必要な診断と治療」を行うというが「体内病院」構想の取り組みである。これができると入院も手術も不要で通常の日常生活をしながら診断・治療を何の苦痛もなく出来るという。まさにSFの世界である。しかしこの実現に向けて研究開発をしていくというのだから本当に驚いた。もちろんその他の最先端の研究分野の話しも大変興味深いものであった。
平成23年、特区認定された頃は様々な夢やプランはあったもののこの殿町地区はまだ実験動物中央研究所だけがポツンと建っただけの、広大な工場跡地は空地のままであった。
あれから約3年。今や研究開発の拠点となる建物が次々と現実の姿となっている。今年末からは国立医薬品食品衛生研究所が現在の世田谷からの移転に向け建設工事がはじまる予定だ。この研究所も当初は横浜への移転が検討されていた時に特区認定受けた殿町への移転を私が川崎市と一体となって厚労省に強く働きかけギリギリのタイミングで実現したものである。
シンポジウムが終った夕暮時。外に出て当時の光景を感慨深く思い出しながら夢だったことが実現しつつあることを実感し心が踊った。