この三連休は久し振りの好天が続いた。白い雲が浮かぶ秋の空。季節は確実に秋へ移っていることを実感する。
北海道大学で開催さている獣医学会で小野寺教授(東大)と桐澤教授(酪農学園大学)高田教授(北大)の三人にお会いするために10日から11日まで札幌に出かけた。今世界で猛威をふるっているエボラ出血熱及び口蹄疫ウィールスに関して専門家の三人から様々な知見を教えていた頂くためである。大変有意義であった。そしてその10日の深夜。正確には日づけが変わった11日の午前3時頃。ぐっすり熟睡していた時、突然携帯電話が鳴った。すぐ音は消えたのでまた眠った。しかし再び音。眠い目をこすりながらさすがに4回目には携帯電話を手に取った。何と札幌市災害対策本部からの緊急の避難勧告のメールであった。驚いて部屋のカーテンを開けると外は雷雨しかも豪雨である。ホテルは札幌駅に隣接しておりしかも26階。避難の必要はない。しかしもし一軒家の自宅だったらどうだろうか?この雷雨の中、避難場所まで行けるのだろうか?など考えながらあの広島市の災害時の状況を想像した。現実この様な状況に遭遇するとなかなか難しい判断だなと思った。
この三日間は各町会の敬老会に出席した。どこの会場もお元気なお年寄りで盛会である。女性はもとより男女合計で平均寿命は日本が84才で世界一である。この世界一は本当に素晴らしいことだと思う。
しかし世界は広い。WHO調査(194ケ国)によると世界で最も平均寿命の短い国はシエラレオネで46歳である。いまエボラ出血熱の猛威がふるっている国である。またシエラレオネ近隣の国々は何れも平均寿命が非常に短い。
そのシエラレオネ近隣の西アフリカに約25年前に出張した事がある。ナイジェリア、トーゴ、ガーナである。ちなみに、それぞれの現在の平均寿命はガーナ64才(156位)トーゴ59才(172位)ナイジェリア55才(184位)である。その出張でいくつかの忘れ得ぬ思い出と光景がある。なかでも最も印象的だったのはトーゴの首都ロメの夜、ホテルの部屋から見た光景である。そもそもトーゴは現在も世界最貧国のひとつである。首都ロメと言っても想像を超えた貧しい暮らしぶりである。
ロメに着いた日の夜、味の素から出向している小山さん夫妻と市内のレストランで食事をしてホテルに戻った。シャワーを浴びホッと一息ついて部屋の窓から薄暗いロメの町を眺めた。外国人向けのホテルで私が泊まった部屋は10階辺りだった。そのうち何気なくホテルの玄関口に目がいった。エントランスに街灯が数本ある。高さは5~6メートル位で薄明りである。よく見るとその街灯の下に男性が2~3人立っている。
私は「外人を狙った客引きだな。でもお客がいるのかな」と思った。数時間後もまだそのまま男達は立ちっぱなしであった。
翌朝、迎えに来た小山君に「どうも一晩中ホテルのエントランスの街灯の下に男性が何人か立っているようだけど、客引き?」と尋ねた。小山君は即座に「何言ってんですか!あの人達は学生です。本を読んで勉強しているんです!家は勉強できる環境にないので一晩中外の街灯の明かりで勉強しているのです。今夜よく見てください」と言った。その夜ホテルの部屋からその街灯を見た。そこには昨夜と全く同じ光景があった。まさに蛍雪時代!極貧のなか夢を持ち向学心あふれた若者の姿をしばらく時間の経つのも忘れてジッと見つめ続けた。忘れられないロメの夜の光景である。