グッドウィルが違法な労働者派遣を繰り返していたとして事業停止命令と事業改善命令を受けた。
昨年8月にはフルキャスト社が事業停止などを受けたばかりであり、業界トップの2社が相次いで厳しい処分を受けたことは業界全体にこうした違法行為が蔓延している証しであろう。
そもそもグッドウィルは05年にも建設業務への派遣で改善命令を受けていたにもかかわらず、同様の派遣を続けていた。
また二重派遣を承知していたにもかかわらず継続したというのである。
二重派遣は労働災害等に対する企業責任の所在が不明確であり、絶対に許されないことである。
言語道断である。
一方このグッドウィルが派遣している労働者は一日平均約3万4000人だという。
この人たちへのフォローは現実問題として極めて重要である。
私は以前からこうしたことが起りうるのではないかと危惧の念をもっていた。
それはこの労働者派遣法改正のたびに私が指摘してきたことだが、法律の基本そのものが使用者の側の視点しかないということであった。
即ち、働く側の立場や視点が欠落した法律であったことである。
使用者、経営者からみて「使い勝手のいい雇用」を増やすことに主眼がおかれたといっても過言ではない。
その象徴的事例を一つ紹介したい。
2003年5月14日の衆議院厚生労働委員会の派遣労働法改訂の審議に際して私は次の様な質問をした。
「雇用労働分野の規制緩和について総合規制改革会議での検討内容が、ほとんどそのまま閣議決定されました。この総合規制改革会議の中に人材派遣業に関連したメンバーが複数参加しているのは何故なのか。大臣の見解を承りたい。」
結局この時の改訂でこれまで原則規制されていた製造業、医療分野でも派遣労働が解禁となり、さらに派遣労働先の雇用期間も1年から3年に延長されてしまったのである。
私が指摘したことの要諦は、総合規制改革会議には人材派遣業界からザ・アールの奥谷禮子氏、リクルートの河野栄子氏が入っており、またとくに奥谷氏のザ・アールはこの会議の議長である宮内義彦氏が会長をつとめるオリックス社が第2位の株主であり公正な論議が担保されていないのではないかというものであった。
この国会での私の発言への奥谷、宮内両氏の反応は極めて異常であった。
そのことは逆に私の指摘が正鵠を射たまさしく図星の発言であったことを証明したようなものでもあった。
(加藤紘一著「強いリベラル」(文藝春秋社)P94~96などに詳しく紹介されている。)
即ち、労働の流動化や経済のグローバル化というキャッチフレーズの下で、働く人を人材として位置づけることなく単なる企業収益を上げる手段の一つとした雇用政策のツケが、この事態を招いた根本的な要因だと思う。
この際、日雇い派遣の禁止を始め登録型派遣のあり方など、本来の派遣労働とはどういうものか今一度見直すべきだと思う。
その見直す視点は「労働は商品ではない」という理念の下、「労働の尊厳」そして「働くことに誇りの持てる労働」という点につきると思う。