やはり雇用が気がかりである。
全般的な雇用情勢も依然として厳しく明るさは全く見えない。
この5月の完全失業率も引き続き4.0%と高水準である。
有効求人倍率は1.0倍を切って0.92倍と4ヶ月連続で悪化した。
とりわけ35才以上の働きざかりで生計費負担が厳しい世代の男性の失業が、大幅に増加しているのが大変気がかりである。
完全雇用の日本といった時代が遠い昔になってしまった。
政治の基本は「働く意志のある人に職を与える」ことにあるはずなのに、雇用の実態にも今の政府は鈍感であり、何ら有効な政策を打ち出そうともしない。
こうした中、何かと話題と議論になっているのが、あの秋葉原通り魔事件である。
もちろんこの事件はいかなる理由や背景があろうと絶対に許すことはできない事件である。
その上で、類似した無差別の通り魔事件が最近多発することは、単に本人の問題とだけいっていれば解決していく話ではない。
こうした事件が多発する様になった社会構造にメスを入れることが必要な気がしてならない。
とりわけ今回の秋葉原事件の犯人が書いたブログは注目にあたいする。
その一つに「あっ、住所不定無職になったのか。ますます絶望的だ」というのがある。
自分の派遣先が人員整理をするということを聞き、自分も解雇されると思った時のブログである。
彼の様に派遣会社の借り上げ寮に住んでいると、失職イコール住む家を失うことになる。
まさに住所不定となる。そして住所不定となれば、定職に就くのはまさしく絶望的となる。
即ち、こうした派遣労働者にとっては解雇とは、いわば死刑宣告のようなものであると言えよう。
派遣労働の多くは常にこうした危機や不安と隣り合わせであるということでもある。
2004年の派遣法の改悪で工場の生産ラインにも派遣労働を可能としたことで、一層このような悲劇的な派遣労働が生じたことは間違いない。
派遣労働の規制緩和がもたらす問題は、私が衆議院議員として民主党の雇用問題担当の責任者をしていた時に、労働者派遣法改正のたびに国会で強く指摘していたことである。
私が危惧していた通りの労働の実態になってしまった。誠に残念でならない。
最大の問題は「労働が商品」として扱われる様になってしまったことである。
私は一貫して「労働の尊厳」を主張し続けてきた。
働く人には人生があり家庭があり、そして何より自らの仕事に誇りをもちたいものである。
すべてとは言わないが今の派遣労働、とりわけ日雇い派遣は「仕事や自分に誇りがもてる働き方」には程遠い実態である。
民主党も、もう一度労働者派遣法を原点に立ち戻って見直すべきである。
その基本は「労働は商品ではない」ということ、そして「労働の尊厳」をしっかりと保持できる雇用であるということである。
どのような働き方であろうと、どの職場で働こうと”明日への希望”だけはすべての人が平等にもてる社会にすることが政治の最大の使命である。