今年は梅雨らしい梅雨である。
今日も午後からは雨が降り始めた。
その雨にぬれたあじさいが美しい。
昨日急に、九州佐賀へ日帰りした。
有明海に浮かぶ様に佐賀空港がある。
空港の周辺は一面の水田である。
いま九州は田植えの季節である。
水を張った水田にもはげしく雨が降りつづいていた。水田があふれるばかりの雨である。
どしゃぶりの雨にあうと忘れえぬ思い出があり、よくその光景を思い出す。
25年以上も前のこと。はじめて東南アジアに出張をした。
インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、香港の当時私が勤務していた味の素の事業所を回訪した。
季節はちょうど今頃の6月である。
最初の訪問地がインドネシアのスラバヤであった。
スラバヤはインドネシア第2の都市である。
着いた日の夜、味の素からの出向者の人達と会食となった。
市内の一流レストランである。
季節は雨季で外はいつの間にかスコールになっていた。
食事中、突然電灯が消えて店内は真っ暗になった。
私がびっくりしていると出向者の人たちはあわてることもなく「いや、いつものことですよ。昔は日本でも時々停電がありましたよね。スコールが激しくなるとすぐ停電するんです」といって、テーブルの上にあったローソクに火を灯した。
ローソクは飾りではなかったのである。
とうとう食事が終わるまで停電が続いた。
やがて食事と懇談が終わってホテルまで車で送ってもらうことになった。
市内は水びたしである。いたる所が冠水している。
排水のインフラが悪いので、これもいつものことだそうである。
「車を途中で停めるとエンストをおこすといけないので、ホテルの前にきたらスピードを落とすので、城島さん飛び降りてください」という。
どしゃ降りの市内を水をかきわけるようにして車がゆっくりと走る。
その途中外を見ていると、いたる所に子供達が10人くらいの集団でびしょぬれになって立っているのに気がついた。
「あの子供達は一体何をしているの?」と私がたずねると
「あぁ、あのずぶぬれの子供達はエンストをおこす車をまっているんですよ。エンストをおこした車がいたら、とんでいってみんなで目的地まで押していくんです。それで稼ぐんですよ。家族の中で子供達は一番の稼ぎ頭なんです」という。
驚いてそれから目をこらしてみると、確かにどしゃ降りの雨の中、ずぶぬれになりながら子供達がこちらの道路をみているのである。
「う~ん」と言ったきり、私はしばらく言葉が出なかった。
あれから25年、その時の子供達はもう立派な大人になっている頃である。
どしゃ降りの雨に出会うと、あのスラバヤのスコールの中に立つ子供達が浮かんでくる。