雇用問題が政治的にも最大のテーマとなってきた。
ここへきて一気に派遣社員をはじめとした非正規雇用の勤労者に対する「雇い止め」や「中途改約」が急増している。しかも日本を代表するトップ企業であるトヨタやキャノンといった企業が、その先頭を切ってこうしたリストラを実施するのだから衝撃である。
トップ企業の経営者がこれでは、あとはおして知るべし。とすると、雇用情勢は今後相当深刻な事態になるのではないだろうか。政治の責任は重大である。
たしかに生産も大きく減少している。従って利益も大きく減益だと思われる。しかしそれでも赤字ではないし、従来通り配当もしている訳である。にもかかわらずこの年の瀬にきての解雇には大いに「異議あり」である。
この最大の原因は我が国の派遣労働法にあると思う。
私は衆議院議員時代、民主党の雇用政策の責任者として派遣法が改正されるたびに強くその問題点を提起しつづけてきた。
国会論戦の中で派遣労働法と徹底して闘ったと自負している。
国会論戦では、派遣法は労働の尊厳を否定する雇用を生み出すものだと主張し、「労働は商品ではない!」と何度も声を大にして法案を撤回すべきと主張しつづけたものである。
たまたま今日のNHKの「日曜討論」でこの雇用問題が取り上げられていた。
メンバーは連合の逢見直人、作家の雨宮処凛の両氏に加えて、奥谷、八代両氏も出ていた。
この2人、とくに奥谷禮子氏とは、この派遣法を巡って大いなるバトルを展開したことがある。
ことの発端はこうである。
-2003年5月14日衆議院厚生労働委員会・派遣労働法改正審議で質問に立った私は冒頭-
「雇用労働分野の規制緩和について総合規制改革会議での検討内容が、ほとんどそのまま閣議決定されました。この総合規制改革会議の中に人材派遣業に関連したメンバーが複数参加しているのは一体なぜなのか。おかしいのではないか。大臣の見解を求めたい。」と発言した。
私の指摘のポイントは・・・
①総合規制改革会議には人材派遣業界からザ・アールの奥谷禮子氏とリクルートの河野栄子氏が入っており、公正中立とは言えないのではないか。
②とくに奥谷氏のザ・アールは総合規制改革会議議長の宮内義彦氏が会長を務めるオリックスが一万株を持つ第二位の株主であり、公正な議論が担保されていなのではないか。
このような利害関係人がそろって派遣法のルール変更に関わっているということは、権力を利用した利権そのものではないか。本質的にいかがわしいし、おかしいというものであった。
この質問に対して、奥谷氏、さらに宮内氏から私や党代表、そして何と国会にまで抗議文が公式文書として提出されるという前代未聞のことがおこった。
その抗議の内容もまた常識や常軌を逸したひどいものであった。
当然のことであるが私や党、そして国会の厚生労働委員会委員長も当時の衆議院議長に対し、この二人の抗議は・・・
「国会議員の自由な言論が最大限に保障されていることを全く理解していない暴挙であり、高圧的に措置要求を行う行為は委員会の民主的立場に対する重大な挑戦である」として論外だと結論付けられた。
まさに前代未聞の事件であった。
逆にいえば宮内、奥谷氏にとっては、私の指摘がズバリと本質をついていたものと思われる。
結局この時の改正で、これまで原則規制されていた製造業でも派遣労働が解禁となり、さらに派遣労働先の雇用期間もそれまでの1年から3年に延長されることになった。
このように派遣労働法は法律の中身だけでなく、自己利益を追求する汚れた利権絡みの中で成立をした極めて質の悪い法律であると思う。
この派遣法の問題点や、そもそもこの法案を作る背景にあった、いかがわしさを徹底的に追求した当時の熱い思いが、いま再びふつふつとわいてくる。
もう一度「労働は商品ではない」「労働の尊厳」に裏打ちされた雇用制度を何としてもつくりたいと思う。