昨日までのぐずついた天気から今日は澄み切った秋の日となった。
ひんやりとした空気が心地よい。
街路樹の銀杏も色づき始め、歩道には落葉がみられるようになった。秋深しである。黄金色に色づき始めた銀杏並木を見るといつも思い出すのが、晩秋のポーランドのワルシャワである。
1981年の秋、東欧とヨーロッパを旅したことがあった。ちょうど11月の今頃、ポーランドのワルシャワに入った。
その時みごとに黄金色に輝くように色づいたワルシャワの街路樹に目を奪われた。冷たい空気の中にまるで絵葉書に出てくるような風景であった。
その町並みとともに私の心をうったのは、ソ連の影響下にある独裁国家体制に対して、自由を求めて立ち上がったワレサ議長率いる「連帯」のメンバーの燃えるような情熱であった。
連帯本部で当時のナンバー2だった若きクルピンスキー副議長と会った。
引き締まった細身の彼は、にこやかな笑みの中にまさに凛とした姿で私の前に現れた。その姿は感動的ですらあった。その時の彼の姿を私は今も鮮明に覚えている。
その旅から帰国した直後にポーランドのヤルゼルスキー首相は連帯を非合法化し、そのクルピンスキー氏も逮捕されたことを新聞で知り大変ショックをうけた。
しかしそれから約8年後、ベルリンの壁が崩壊し連帯のワレサ氏も大統領に就任するという、誰も予想できなかった歴史的な大激動を迎えるのである。
その歴史的な大変化の原動力に当時の連帯の活動があったことは間違いないと思う。
歴史を動かすようなことの底流には、それまで多くの人たちの命懸けで挑戦する日々のあることを教えてくれたような気がする。
秋晴れの午後の昼下がり、色づき始めた銀杏の並木を歩きながら、もう25年以上も前のワルシャワの美しい街路樹の風景と改革に燃える若き青年の姿を思い出した。