久し振りに胸がときめいたうれしいニュースがあった。
それは去る23日に種子島でH2Aロケットによる人工衛星打上げ成功のニュースである。
しかも何と7基の小型衛星が打上げに成功したというのである。主衛星は温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」。その他、東京大の「ひとみ」、東北大のスプライト観測衛星「雷神」、香川大の「KUKAI」、宇宙機構の「小型実証衛星1型」などに加えて「まいど1号」と「輝汐」という2つの小型衛星がユニークである。2つともなかなか名前がいい。関西のあいさつ言葉の「まいど」は東大阪市の町おこし運動が原点だという。
景気の悪い話ばかり多い中で多くの中小企業が集まって「人工衛星打ち上げプロジェクト」を立ち上げ、多くの人の協力の下に今回の成功につなげたのだという。そして、衛星にこの会の会員2614人の名前が刻まれたプレートがつけられているという。それが今地球を回っている。
またもう一つ、「輝汐」(キセキ)という小型衛星もユニークである。
大きさは一辺15センチの立方体で重さ3キロ。作ったのは都立産業技術高等専門学校荒川キャンパスの学生12人で年齢は15-22才の世界最年少級の衛星開発チームである。
こちらも荒川区内の町工場の技術支援と区民からの寄付で成功にこぎつけた。そこで衛星のアルミ板に寄付者の名前などを書いたマイクロフィルムをはりつけてあるという。合計103人、こちらも今、輝きながら地球を回っている。
なかなか日本も捨てたものじゃないぞと、元気がわいてくる話である。
この人工衛星のニュースを聞いて、高校時代、人工衛星を初めて見た時の感動を思い出した。
当時、新しく建った理科の実験棟の屋上に天体望遠鏡を設置した小さな観測ドームが出来た。この施設の担当は生徒全員が「スッタン先生」と呼ぶ山口というラサールの名物先生であった。先生はいつも白衣をきており、風貌もしゃべり方も科学者風で、生徒をしかるとき優しさを込めて「この馬鹿スッタンが」と言ってしかることから、「スッタン」というあだ名がついていた。そのスッタン先生が「今夜アメリカの人工衛星が見れるから興味あるものは夜、学校に来い」という。まさか人工衛星が見れるものとは当時思ってもみなかった。だから驚くと同時にどうしても見てみたいと思った。その夜、学校へ出かけていった。わずか2-3人だが同級生が集まった。そして理科実験棟の屋上で先生が「これから星の様に輝く人工衛星が飛行していくのが見えるぞ、よく見ておけ」といって、南東の方向を指さした。校舎の前にひろがる錦江湾(鹿児島湾)、そして美しい夜空。やがて大隈半島の上空からゆっくり、しかし思ったより早く飛行する輝く星が見えた。
「人工衛星だ!」
はじめてみた宇宙を飛ぶという人工衛星に感動を覚えた。
今や人工衛星も若い学生や中小企業の技術者や科学者が打ち上げる時代になった。素晴らしいことだ。