12月10日から13日まで北京を訪れた。民主党の訪中団の一員としての参加である。
日本のメディアの中には一般参加者含めて600人の訪中団が、まるで今回はじめてかのような報道があったようである。しかし今回で16回目、昨年だけは衆議院選挙が確実といわれていた為、見送りとなったものの一昨年の前回も400人規模だったという。しかも議員も一般参加も全員がすべて自己負担によるものである。
私にとっては約10年ぶりの北京であった。市内の街並みはすっかり変わっていた。
高層ビルが林立し、車であふれ渋滞の市内、以前のおもかげは全くない。
今回私の目的は何と言っても衆議院の北朝鮮による拉致問題等特別委員長として拉致問題の解決に中国政府の理解と協力を求めること、及び北朝鮮政府の現状について正確な情報をうることであった。
12月11日午前、中国の外交部(日本の外務省)に出かけた。胡外交副部長(日本の副大臣)との会見が実現した。
私は、まず胸につけたブルーリボンのバッヂの説明をした後、日本は何と言っても拉致問題の解決なくしては日朝関係の改善はありえないことをしっかりと訴え、中国政府の協力も求めた。
胡副部長はブルーリボンのことは知っているし拉致問題の重要性もよく理解しており、できるだけ協力したいと答えた。また胡副部長は一連の発言の中で大変興味深いことを語った。
●10月の温家宝首相の訪朝で温家宝首相と金正日書記の会談が10時間に及んだこと。
●今回の米国のボスワース特使の訪朝は米朝間で水面下でかなりの交渉が行われた結果であること。
●北朝鮮はあくまでも米国との二国間交渉にこだわっている。中国は米朝交渉を支持する。しかしこれは六者協議にかわるものではない。あくまでも六者協議への過程の一つである。
という三点であった。
その後、北京で聞いた情報によると10時間に及んだ温家宝、金正日会談は合意には至らなかった。具体的には温家宝が「食糧援助」「経済支援」をするので「六者協議」に戻ることを金正日に迫ったものの、六者協議への復帰は約束しなかったということである。従って中国も経済支援は取りやめて食糧援助のみを約束したという。
さらにこれに関して興味ある話として、そもそも温家宝訪朝にあたり金正日が空港への出迎えるのかどうか出発の直前まで北朝鮮は中国側に回答をせず、中国側を苛立たせたそうである。結局彼は出迎えたものの、平壌入りした後温家宝首相と会談するのかどうか、これまた全く不透明な状況が続いた。そこで温家宝はしびれをきらして朝鮮戦争に参加して戦場で亡くなった毛沢東主席の息子毛岸英の墓参りをする。しかもわざわざ平壌から車で3時間程度かけたという。
ヘリコプターで行けばあっという間のところをあえて車で行ったのは・・・なぜか?
金正日に「いいかげんに会談に応じろ」というメッセージだったというのである。
その後実現した会談は10時間に及び、結局合意に至らずというものであった。
中国と米国をまるで手玉にとるかのような北朝鮮の対応が目に見えるようである。そして北京では次はクリントン国務長官が平壌入りするという噂まで流れている。
北朝鮮外交のしたたかさ!
拉致問題の解決にむけ、我国もしたたかに、そしてしなやかに戦略的な外交を展開していくべき時にきていることを実感した。