最近、日銀の新しい金融緩和策についてよく質問をうける。そこで、私が話をするのが財務大臣当時のG7、G20などの国際会議で私が何を主張し各国に訴えたのかということである。と同時にエピソードとしてIMFのラガルド専務理事との思い出話も披露することが多い。
ラガルドさんに初めてお会いしたのは仙台でのIMF・世界銀行東京総会開連の「防災と開発に関する仙台会合」であった。そして、次の日の朝、東京でラガルドさんと私の公式の面会があった。
私が「昨日は仙台での被災地を視察し、仙台会合を実りあるものにして頂き有難うございました。」と握手しながら挨拶をした。するとすぐ彼女は「充実した会合でした。また被災地視察も有意義でした。ところで城島大臣!昨日胸につけられていた素敵な赤い羽根は今日はどうされましたか?」と尋ねられたのには驚いた。確かに昨日まで赤い羽根を2週間あまりつけていたがその日はスーツを変えたこともあり、赤い羽根をつけかえずに来たのである。そのチョットしたことまでよく気がつく、大変な気くばりの人だと感心した。私が赤い羽根の説明をしたら彼女は「じゃ私も寄付しなくちゃ」と応えた。こうした会話から約30分の会談が始まったのである。
そして、翌12日がいよいよ総会である。そこで私は「そうだ!彼女に赤い羽根をプレゼントしよう」と思いたち、赤い羽根をつけて総会に出席した。彼女の格調高いすばらしい演説を含め総会が終り記念撮影となった。そこで私は私の赤い羽根をとり、彼女に「赤い羽根をプレゼントしましょう」と言って彼女の胸につけた。その日の彼女はたまたま何と上下真っ白のスーツであった。赤い羽根が見事に映えた。その場面が世界に報道されたのである。
そして、約1ヶ月後の11月4日メキシコシティーでのG20に出席した。その初日のレセプションで彼女に「東京総会お疲れ様でした」と言うと彼女は「すばらしい総会でした。日本のホスピタリティは最高でした。また城島大臣から頂いた赤い羽根は今ももっていますよ」という返事。しっかりと今も赤い羽根のことを覚えてくれているのに感心した。
そして、12月私が財務大臣を退任し麻生新大臣に交代した由のあいさつ状を各国財務大臣に送った。多くの大臣から慰労と励ましの返事を頂いた。その中で彼女からは自筆で「あなたから頂いた赤い羽根は今も持っています」という一行があった。
私とほぼ同じ身長で若い頃フランスのシンクロの選手でもあり有能な弁護士でもある彼女の完璧なまでの気くばりと人への配慮に感心と感動を覚えた。
総会後の記念撮影前に赤い羽根をプレゼントした
ラガルドIMF専務理事の直筆の文章
「I still have with me your red feather decoration !」
「あなたから頂いた赤い羽根は今も持っています」