ロシアのサンクトペテルブルクで開かれていたG-20首脳会議が6日に閉幕した。今回のG-20が特に注目されたのは、依然不安定な世界経済への対応に加えて、シリアへの武力行使の構えを見せるアメリカへの各国の対応がどうなのかに注目が集まっていたからである。会議の結果は、世界経済、シリアのアサド政権への対応ともに意見と見解が別れ統一見解をまとめることが出来なかった。各国の利害対立が大きく、駆け引きに終始した感がつよい。特にオバマ大統領とプーチン大統領との鋭い対立は今後の国際情勢に暗雲をもたらしたと思う。いよいよ安倍首相の外交政策の真価が問われる状況となった。注視していきたい。
ただこのG-20のありかたにも工夫が必要だと思う。これだけ大勢の各国のトップリーダーが様々な議題を論議するのにわずか1日半程度で論議が深まることなど不可能に近い。大方は各人が夫々の意見を述べるのが精一杯である。勿論事前に議長国が中心に各国の事務当局とすり合わせをしているし、リーダー同士が顔をあわせて意見交換すること自体に大きな意義があることは否定はしない。
私が財務大臣として昨年11月メキシコシティで開催されたG-20財務大臣、中央銀行総裁会議は1泊4日の強行スケジュールであった。11月4日11時に成田空港を出発してシカゴ経由メキシコシティの空港に現地時間同じ4日の13時過ぎに着き、会場でもあり宿泊先のホテルに14時30分頃に到着。18時からシンガポールのターマン財務大臣と面会。ターマン大臣はシンガポールの若手政治家7人「スーパーセブン」の一人である。奥様は日中ハーフの藤沢市生まれの著名な弁護士である。ターマン大臣は、シャープな切れ者といった印象であった。18時30分から19時15分カクテルパーティー、ここでIMFラガルド専務理事、世銀キム総裁などに10月のIMF,世銀東京総会のお礼を言われた。異口同音に東京総会はホスピタリティがとても素晴らしかったと言われた。そして19時15分からワーキングディナーによる世界経済のセッションスタート!私も含め各国の財務大臣や中央銀行総裁の発言が22時頃まで続く。その討議が終わるといわゆるぶら下がり記者会見をして22時30分頃初日終了。日本を出発して長い長い一日がやっと終わりベッドに倒れこんだ。 二日目は、朝7時ホテルで一緒に出席している白川日銀総裁と食事しながら意見交換。8時からドイツのショイブレ財務大臣と面談。彼は東西ドイツ統一の立役者とされているドイツを代表する大物政治家である。1990年、フライブルグ遊説中に銃撃を受け瀕死の重傷を負い下半身不随になり以降車いす生活を送っている。お会いして、評判通りの理論家で徹底した財政再建論者であった。8時30分から10時30分まで金融規制について論議。15分のコーヒーブレーク後、エネルギー、一次産品の論議が12時15分まで続く。また15分のコーヒーブレイク後、12時30分から14時30分まで最後のテーマの国際金融制度設計についてランチをとりながらの論議である。14時30分からコミニュケ採択して会議は終わった。その後、私は白川総裁と共同記者会見を行って、空港に直行。18時43分発の便でロス経緯で11月7日朝5時羽田空港に帰国。そしてその日の午後、衆議院財務金融委員会に出席して答弁に立った。結局メキシコシティでホテルから外に出たのは着いた直後の1時間ほどだけであった。今は懐かしい思い出である。